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2007年7月16日 (月)

パートⅡ第5回 LOHASプロデューサー 大和田順子さん

LOHASビジネスの始め方

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恒例により、私のキャリア軌跡をお話ししたいと思いますが、前回かなり詳しく自己紹介いたしましたので今回は簡単にいたします。(大和田さんのキャリアの軌跡については、第11回目の講義録を参照。)

この一年半、「自己実現から社会実現へ」、「自己利益から利他へ」をキモに命じて、やってきた。7月にはロハス・ビジネス・アライアンス(LBA)を設立する。これは何かというと、企業、特に中小企業でロハスに関心がある方がたの参加を求め、ビジネス・コミュニティを作り、そこで参加企業が共に学び、共にビジネスを展開するような仕組みである。同じ志を持った企業の顧客は、同じような価値観を有しているのではないかと推測しているわけで、もし、一社で1万人の顧客を有している会社が100社あれば、アライアンスを通じ、100万人の顧客を共有できるということになる。また、LBAではロハス講座を予定しているが、そこではミッション・ステートメントの作り方、ビジネス・モデルの作り方、商品開発の仕方、あるいは販売についてなど、ビジネスの様々な観点についてロハス・ビジネスならでは取り組み方法をロハス企業のトップに語ってもらう予定だ。今日の話はそのさわりを紹介することになる。

ロハスとは何か、そしてロハスはどこでどのように発生したかについて、また、ロハス・ビジネスと言っても実際にはどのような産業が含まれるのかについて、スライドを使用しながら説明したい。(第11回の講義録を参照)

国内外のロハス・ビジネスのカテゴリー別の事例としては以下のような企業が挙げられる。

分類1/ヘルシー・ライフスタイル

産業としては有機食品、サプリメント、パーソナルケアなど。事例:ホールフーズマーケット、大地の会、パタゴニアなど。

分類2/オルタナティブ・ヘルスケア

産業としては鍼灸、漢方、アロマテラピーなど、いわゆる統合医療。事例:トムズオブメイン、生活の木、ファルマカなど。

分類3/パーソナル・ディベロップメント

自己啓発、瞑想、ヨガあるいは旅など。このカテゴリーは、ロハスの心臓部分だと思う。事例:ガイアム、スタジオヨギー、各種セミナーなど。

分類4/エコロジカル・ライフスタイル

産業としてはエコ住宅、グリーン購入、エコツーリズムなど。事例としては三洋電機、星野リゾート、OKUTAなど。

分類5/サステイナブル・エコノミー

産業としては再生可能エネルギー、CSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)、SRI(Socially Responsible Investment =
社会的責任を果たしている企業に投資すること。社会的責任投資)など。事例としてはサステイナブルインベスター、アミタ、小舟木エコ村などが上げられる。

企業がロハスであるかどうか、どのように評価したらよいのだろうか。私は、ロハス・ビジネスを選定するにあたって、全部でなくても、以下のような基準を満たしているかどうかを目安とした。

・ロハス的価値観をミッション・ステートメントに取り入れて企業活動を行っているか。
・顧客の健康に寄与する製品・サービスを提供しているか
・サステイナブル・エンバイロンメント、つまり持続性のある環境保全に役立つ製品・サービスを提供しているか。また、企業として環境対策に取り組んでいるか。ISO14000 の取得などはその一例。
・従業員の能力を活かし、幸せで豊かな生活やワークライフバランスが取れるような仕事環境を作るのに力を入れているか。米国企業はこの点は実践する企業が多いが、日本企業はまだ少ない。
・顧客やステークホルダーの共感・信頼を得るようなコミュニケーションを行っているか。売りっぱなしではないか。透明性の高い情報開示をしているか。
・社会問題や環境問題を解決するような社会貢献活動をしているか。

以上のような視点でロハス企業を選択しているが、上記のアメリカの企業は大体この基準を満たしている。いくつか例を紹介する。

・ガイアム:ライフスタイルメディアカンパニー。1996年にロハスを提唱。ロハス会議の開催、ジャーナルや通販カタログの発行、ネットでの商品販売、ライフスタイルの提案などを行っている。ヨガやフィットネスのDVDなどが売れ筋。顧客の8割は女性で、年収7万5000ドル以上の高額所得者。
・ホールフーズマーケット:オーガニックな農産物を扱うグルメスーパー。地域の農産物を扱い地産地消を唱えている。3割がオーガニックで7割が低農薬商品で、そのことを明示している。ビジュアルマーチャンダイジングがとても美しい。家庭のCO2排出を削減するために、「カーボンフットプリント削減キャンペーン」を通じて、意識喚起を行っている。最終利益の5%をNPO 等に寄付している。ちなみに、米国のオーガニック市場は2005年で一兆7000億円程度。2010年には4兆円サイズになるといわれている。日本では3000億円くらいの市場規模。
・ファルマカ:ボールダー発祥のドラッグストアで、西洋医療と代替医療サービスを統合した医薬品・関連商品・サービスを提供している。アーユルベーダやアロマセラピーとは何かなどについて、セミナーや個別カウンセリングを行っている。日本にはない業態で、誰か日本で始めないかなと期待している。
・パタゴニア:アウトドアウェアメーカー。この会社は日本にも支社がある。ミッション・ステートメントでは「ビジネスを通して環境の危機を解決する」とうたっている。1996年以来、オーガニック・コットンを使用し、ポリエステルのリサイクルを行い環境負荷低減に取り組んでいる。売り上げの1%を寄付している。高い社員の満足度を誇る。

日本の事例を紹介する。

・三洋電機:経営の危機に見舞われているが、2005年、再生を牽引する新ビジョン「Think GAIA」を導入した。新商品の充電池、「エネループ」はロハス層をイメージして開発された。1000回充電でき、“使い捨てでないライフスタイル”を訴求。この商品の売り上げは目標を上回り、新顧客を開拓した。
・生活の木:ハーブを広めて25年。アロマセラピーは日本で一番普及していると重永社長は言っている。ハーブを輸入し普及させるための新しいビジネス・モデルを作った。教室を通じ、お客と対話することでビジネスを伸ばしてきた。現在はアーユルベーダを紹介することに注力。
・OKUTA:自然派のリフォーム会社。シックハウス症候群などが社会問題になり、2002年に塩ビクロスの使用をやめた。結果は健康に留意する顧客が増え、客単価は以前の60万円から、600万円に上昇した。
・オーガニック農産物を扱う各社。大別すると4つのチャネルがある。
〈有機農産物の宅配サービス〉
 大地を守る会、8万人の会員。年商124億円。
 パルシステム
 らでぃっしゅぼーや等
〈自然食品店〉
 ナチュラルハウス
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  ナチュラルハーモニー等
〈フードビジネス〉
 惣菜/ファストフード/レストラン等
〈量販店〉
・阪急泉南グリーンファーム(阪急百貨店子会社):3年前に設立した農業生産法人。関空近くに4000平米のハウスで、有機JASのサラダリーフを栽培。年間17回転という脅威の坪効率を誇る。いろいろな農法を研究し、堆肥つくりも自前で行っている。
・アグリス成城(小田急電鉄):線路の上に人口地盤で会員制の貸し菜園事業を開始。グリーンをテーマとしたエンターテインメント事業。日照も良く、富士山も望め、シャワールームも完備したクラブハウスではオーガニックビールを飲むことができる。道具は無料で貸してくれる。種や園芸用品も販売。

日本でロハスは終ったのではないかという声がある。確かに流行語としてのロハスは終ったかも知れないが、ロハスが示唆している価値観やそれに基づいたビジネスはなくなるはずもなく、日本でもロハスに共感する人たちがいるという事が顕在化した。企業としてもこういう人たちを無視することはできない。マーケティングで言うと、イノベーターといわれる先駆的な考えを持つ人たちと、ロハスに共感する人たちの層は重なっている。こういう事を考えるとこれから、ロハス的なビジネスが本格化すると思われる。実際、2007年には、大きな反響を呼んだ映画「不都合な真実」の公開からはじまって、ビジネス誌「オルタナ」の創刊や、ロハス関係の雑誌や本の出版が相次いでいる。

ロハス・ビジネスを始めるには、下記の5つの原則を考慮することが大切だ。
・ミッション(志・使命): ミッション・ステートメントには「サステナブルな社会の実現のために○○で貢献する」というように志を明確にする。
・経営者の価値観・理念:地球的視野に立脚し、地球人として行動する。
・経営方針:将来のビジョンの明確化、環境・社会的責任についての方針・計画を立てる。
・商品・サービス:原材料、プロセス、ストーリー性、デザイン性などに留意する。
・ステークホルダーとの信頼関係:共感、信頼、透明性が大事になる。

ロハス事業を開発するための7つのキーワード。
・「モノ」→「ココロ」
・「所有」→「共有」
・「無限」→「有限」
・「大量消費」→「必要かどうかを考える」
・「使い捨て」→「メンテナンスで長寿命」
・「量」→「質」
・家庭やコミュニティは「帰って寝るところ」→「暮らしの中心」

自然は待ってくれない。地球上のCO2は増え続け、温暖化のポイント・オブ・ノーリターンは、2016年頃と予測されている。私たちはこの10年、どのような暮らしやビジネスを選択するか問われている。また、政府は2050年までに、CO2の排出量を7割カットすると言っている。私たちは将来に向ってどんな低炭素社会を創っていくのか、考え方や、生活・家庭、経済・産業等に関してシナリオを開発する必要がある。ロハス・ビジネスは、本業を通じて社会の課題を解決することを目指し、サステナブルな社会の創造に貢献するビジネスである。

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