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2007年6月30日 (土)

パートII 第1回  富士フイルム株式会社 イソムラアユム氏

あなたのプレゼンは伝わっていますか?
~イソムラ式ユニバーサルプレゼンテーション~

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 私は、富士フイルムのデザインセンターで20年弱、プロダクトデザインをしている。今日の話の内容としては、業務や個人的な活動の中から感じたことのプレゼンテーションのノウハウを紹介したいと思う。私はそれを勝手にイソムラ式と呼んでいるが、文字に頼らず、ビジュアルから感じていただくやり方で、他にはない面白いやり方だと思っている。参考にしていただけたら幸いだ。本日は450枚程度のスライドを使用する。 最初に、そもそも私はどんなデザインをしているのかお話しする。ユニバーサルデザイン(UD)はキーワードで、本日のプレゼンの中に織り込んでいくが、それについての紹介をしたいと思う。また、プレゼンテーションやコミュニケーションは相手のことを知ることからはじまるが、これをサブテーマとしてお話ししたい。

本日のアジェンダ

1 ユニバーサルデザインとは、
2 私のキャリアストーリー 
  そもそもデザインとは
  ユニバーサルデザインとの出会い
  出版のいきさつ
3 イソムラ式プレゼンの紹介
  プレゼンテーションのノウハウを体系的にまとめもので、具体的に使えるエッセンスが盛り込まれている。
4 イソムラ式プレゼンのデモ
  スライド400枚をドンドンみせながら飽きずにビジュアル中心で楽しいプレゼンテーションを実際にお見せする。テーマは「5感を意識したデンマークのデザイン」で、デザインに興味のない方もこんなアプローチがあるのだな、と思っていただければよい。

1  ユニバーサルデザイン(UD)とは?そしてその定義とは?

 UDとはできるだけ多くの人が利用可能であるように、製品、建物 空間をデザインすること。ノースカロライナ州立大学のロン・メイスという方(彼自身も身体障がい者)は、公共空間は障がい者も対象に含めて、きちんとデザインを考えるべきと述べている。彼はポイントを7つ挙げている。

・ Equitable Use  (エクイタブル ユース) 公平に誰でもつかえること。

たとえば入り口は車椅子の人でも通れるように設計する。

・ Flexibility in Use (フレクシビリティ イン ユース)

使用する際に柔軟性があること。たとえば、右手でも左手でも操作を可能にするなど。

・ Perceptible Information (パーセプティブル インフォーメーション)

いろいろな知覚に訴えるデザイン。見ても、触っても、聞いても分かる情報。

・ Low Physical Effort (ロウ フィジカル エフォート)

体力をそんなに必要としないデザイン。たとえば、握力がなくても開けられるとか、鞄をもっていて、手がふさがっていてもひじで開けられるようなデザイン。

・ Simple and Intuitive (シンプル アンド インテュイティブ)

簡潔で直感的。文字で読ませるのではなく、シンプルに絵で表現する。

・ Tolerance for Error (トレランス フォー エラー)

失敗した時にやり直しができるようなデザイン。

・ Size and Space for Approach and Use (サイズ アンド スペース フォー アプローチ アンド ユース)

 誰でもがアプローチでき、使用できるように、充分なサイズとスペースがあること。たとえば、車椅子でも通れる改札口。 このような観点でデザインをすれば、できるだけ多くの人が使用することができるだろう。日本の例で言うとこのようなものがある。

・コクヨのはさみ、カスタネットのような形をしているので、手に障がいがある方も含め、いろいろな人にとって使いやすい。
・コクヨのマグネット。マグネットは強すぎるとはがすのが大変だが、このマグネットは曲がるので取り外しが簡単だ。
・オクソというアメリカ製の軽量カップ。目盛りは普通、横に表示されるが、これは上に表示されているので、上から見て分量がわかる。
・フジフイルムの「写ルンです」。握りやすくしてある。
・リモコン。普通のリモコンと違い、文字を見ながらボタンを押せる。お年寄りに使いやすい。

 以上、ユニバーサルデザイン(UD)製品の事例を紹介した。しかしUD製品という言葉は言い方として少しおかしい。UDとはできるだけ多くの人が利用可能であるように製品、建物、空間をデザインすることで、あくまでもプロセスの定義である。UDのプロセスはいろんな人に対応した便利な機能を盛り込む、そのためにはどんなユーザーがこの商品を使うかという事を知る必要がある。実際に仮説を立ててデザインをしてみて、その人たちに使ってもらうというプロセスを経ながらデザインする、そのプロセスをUDと呼ぶ。 例: シニアの人たちはどのようにPCをどう使うか。シニアの方はそもそも言葉自体がわからないし、マウスの使い方も分からない。拡張子、ウィンドウなどの言葉を知らない人がいる。そういう相手の人たちを理解することからプロセスは始まる。それはつまり現場に行くということでもある。 相手を知るためには、たとえば、被験者に写真のプリント注文をしてもらう。企画者・設計者は被験者がどこでつまずくか観察する。つまずいた所が、改善の余地あるところである。これはユーザビリティテストという。使いやすさのテストであるが、それを通じて相手を知る。 まとめとして、繰り返すがUDはデザインの商品を定義するのではなくて、デザインのプロセスを定義することである。そのために大事なのは相手を知らなくてはならないということだ。

2 私のキャリアについて

 1966年誕生。金沢美術工芸大学、工業デザイン専攻卒業。
卒業制作としてコンピューターの未来形を考えた。8角形の形をしていて、真ん中で割れる。その中にはキーボードとプリンターがある。これにより、ハウジングの会社の営業は現場(顧客宅)で、お客の希望を聞きながらデザインしそれをプリントアウトできるようにな.る。これをデザインするために、三澤ホームやハウジング会社に行って、どのような営業ツールを使っているのか、どのようなことに困っているのか、相手を知ることから始めた。

 富士フィルムに入社後も、相手を知ることにつとめながらデザインした。たとえば、このビデオカメラは、使っている人の様子を知り、左手の親指部分にダイアルがあれば使いやすいだろうと思いデザインした。また、ビデオは縦型にすると脇が閉まって固定し揺れない。 UDは相手を知ることから始まる。実は普通のデザインも同じである。普通のデザインとUDの違いは、UDはより多くの人を知ろうという事である。普通のデザインの場合、対象は、若者とか、女性とか限定されるが、UDは反対に、対象が広く障がいのある方も含めて考える。

 さて、本の出版に関して少しお話しようと思う。UDを行いながら、いろいろな障がいのある方などにお会いして話を聞く機会があった。そして、相手を知りたいという気持ちが高じて、思いついたことがあった。それは視覚障がい者はカメラを使っているのだろうかという疑問だった。 実際は彼らもカメラを使っている。写真を取って家族に見せ、コミュニケーションツールとしている。誤解のないように言うと、障がいのある方は、私が知らないツールの使い方をすることがある。そのことに興味を覚えた。他に事例を集めて、社内の人にこのような使い方をしている人がいるという事を知らせたいと思った。たとえば、視覚障がい者はフォーカス機能を使うことができない。対象をどこに向けているか分からないから、フォーカスができない。そこで、富士フイルムの「写ルンです」はパンフォーカスというフォーカスするタイムラグがない仕組みが組み込まれており、視覚障がい者でもピントがあった写真が撮影できる。それから実際に製品を使っている現場を見たいと思い、ユーザビリティ評価体制を構築することになった。 使ってくれている人を知りたいという気持ちは、だんだん高じ、対象が障がい者含めて広がって行ったが、プライベートでも障害者の方と一緒に活動をすることが多くなっていた。その中で、UDの研究にプライベートでデンマークに視察に行った時のことを、頼まれてある団体で報告を2回行った。私は障がいのある方と接していると、いろいろなことを気づくが、障がい者も理解できるプレゼンテーションは可能なのだろうかと考えた。そこで耳の聞こえない方にはスライドにテキストをすべて挿入しておけば大丈夫ではないかと思い、トライをしてみた。 そこで分かったことは、耳の聞こえない人は、スライドのみならず、私の口の動き、表情、ボディランゲージをすべて見ているという事だ。また、目の見えない人は、音声からしか情報がないために、今、どこにいるか、全体の概略と位置と知りたがっていた。これは普通のプレゼンでも同じことだと思った。障がいの人から大事なことを気づかされた。こういう発見を自分の中だけにとどめておくことはもったいない。どんどん広めていきたいという思いがつのり、それで出版という事になった。

3 「あなたのプレゼンは伝わっていますか?」

 本の内容、プラスアルファをお話しする。伝えるためには伝える方法を知ることが大切だ。3つのポイントが挙げられる。 1.内容をどう組み立てるか 組み立てに関して4つのポイントが重要となる。

① 聴衆は誰か。
  相手を知る必要がある。私は暗い映画館で手を引っ張られている人を想像する。いきなり連れて行かれると恐い。どこにいて、どこに向っているの?少しずつ納得したい。聴衆はそういう人たちだと思う。

② 一歩ずつ進む。
  具体的には一枚ずつ結論する。小さな結論の集積で大きな結論につなげる。一歩ずつ進んでいくことが大切だ。

③ 部分と全体を行ったり来たり。
  全体の俯瞰ができるように全項目を見せ、その中で今、どこにいるかを知らせるために部分と全体をいったり来たりする。情報は羅列でなく、グルーピングをすることにより理解しやすくなる。グルーピングは3つにされる場合が多い。

④ 目的の明確化。聴衆にスポットをあてて、聴衆の立場から以下をはっきりさせる。 
  聴衆が困っていること
  聴衆に提案すること
  聴衆に期待すること

2.スライド資料をどう作るか

4つのポイントがある。
① 見やすいフォント。いろいろな人にとって見やすいとフォントとは、切れず、くっつかず
に、紛らわしくないもの。等幅のゴシック体が見やすいといわれている。
② 文章の扱い方。意味にあわせて行を変え、スペーシング、句読点を考える。
③ 背景の扱い方。さっぱりした所に、はっきりと。写真の上にテキストを載せる場合などちょっと工夫すると見やすくなる。たとえば、写真を少しトリミングするなど。
④ グラフの表現。直感的に分からせる。色盲、色弱の人への配慮をしよう。たとえば、赤いレーザーポイントより、緑の方が8倍明るいといわれている。

3.自分をどう表現するか

① ノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)
  見た目も大事であるということ。同じことを言うのでも言い方よって、伝わり方が違う。
  メラビアンの法則ではボディランゲージの重要度は非常に高い。日本人がよくする手を前で合わせるしぐさは外国では「イチジクの葉」としては揶揄される。

② プレゼンすること、本当に気に入ってますか。
  自分が本当にそうだと思えないものは人は良いとは思わない。がつんとあなたの思いをぶつけること、それが大事だ。

4.イソムラ式プレゼンテーション・デモンストレーション

 「5感を意識したデンマークのデザインについて」のテーマのプレゼンテーションをデモする。イソムラ式とは以下に要約できる。

① 障がいを持つ方を起点としているプレゼンのノウハウで
② 当然、より多くの人が一緒に理解できる。
③ 字幕付プレゼンテーションで、
④ 目と耳で「感じられる」プレゼンテーションといえる。

デモンストレーション内容ならびに質疑応答は割愛。

以上

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